リプリーという映画の原作にあたる「The Talented Mr. Ripley」を読んだ。人間の暗部を描いた陰鬱な内容ですが、妙にリアルで生々しいところが魅力の映画です。そのせいか、本を読む際には登場人物をイメージしやすく、それほど苦労することもなく読むことが出来ました。
児童書以外の一般ペーパーバックを読んだのはこれが3冊目です。
読めないと決めつけていた大人向けの洋書に対して、少しずつ抵抗がなくなってきた気がします。
これを読み終えて感じたのは、やはりストーリーを知っていることは読み進めるのに大きな助けになるということでした。今後も好きな映画の原著にどんどんトライしていきたいと思えるような経験となりました。
この本の魅力
この本の魅力は、なんと言っても「嘘」にあると思います。主人公のトムがディッキーになりすまして生活を続けるという状況が物語全体に緊張感を与えています。スマホでビデオチャットできる現代ではまず不可能な嘘ですが、1950年代の物語ではあり得る話です。
この時代の主なコミュニケーションツールは手紙です。トムは持ち前の模倣力でディッキーの文体をそっくりそのままコピーし、ディッキーの両親や恋人マージに彼が生きてると思わせるため、何度も手紙でやり取りします。
いつバレるのだろうか、と読んでいてハラハラします。トムの顔をトムとして認識している人、ディッキーとして認識している人、その間をギリギリのところで行き来するところが面白いです。また、トム本人の持つ不安定で歪んだ性格と人間離れした感情の無さにも恐怖を感じます。